DESIGN
PROJECT
一つの森から
日本の未来を描きだす
飛騨の広葉樹を
取り巻く背景
海外からの輸入木材のサプライチェーンは、価格競争力を武器に、国産材木の需要を約40%と半分以下に押しとどめ、針葉樹、広葉樹に関わらず国内の林業を衰退させてきました。化粧材に向く品質の良い広葉樹でも家具などには使えない小径木は、やっと芯の部分が使われるのみで、残りはウッドチップなど廃棄同然の扱いとなり、その比率はなんと約95%にも及びます。
安定的な需要を確保できないことは、計画的な伐採や植林もままならず、山林が手入れされないままどんどん荒れてゆきます。高品質な化粧材というポテンシャルを持つ「国産の広葉樹林」という社会資源が活かされず、地域の林業は衰退の一途をたどっています。
飛騨の広葉樹を取り巻く背景
広葉樹が材料として活用されるのは、わずか3%残り97%は切っても高い価値にならない粉砕した木片チップになるか、放置される。
広葉樹が流通しない理由
難易度の高い規格化
広葉樹は同じ規格の木材を安定して生産できないため、伐り出してから買い手に渡るまでの流通の仕組みが確立されておらず、買い手とのマッチングが難しいというのが流通していない理由にあります。
バラバラ
曲がり、節、木目、形、色がバラバラ。
不安定
同規格かつ同一の樹種を定期的に伐り出すことが樹種が多様のため大量生産に向いていない。難しい。
多種多様
樹種が多様のため大量生産に向いていない。
分断されていた
サプライチェーン
広葉樹の活用に挑戦する地域の方々と意見交換をする中で見えたのは、川上から川下である森林組合から住宅会社の各々が持つ固定観念から生じるズレでした。
理想の需要を共有
話し合いの中で、
互いの認知・バイアスを共有
大きな課題となったのは生産計画が立てにくいということでした。川下にいる私たちが年間住宅供給を提示、そこから逆算することで適正な広葉樹需要を導き、共有することで無駄や無理のない理想の流通を実現させました。
化粧材に生まれ変わった
小径広葉樹
100年後も飛騨の美しい広葉樹林を次世代へ紡いていけるように、広葉樹の活用に挑戦する地域の方々と協働。
今飛騨の広葉樹の中でも使われない小径木から価値を生み出す地域再生が始動。
小径木では、これまで破棄されてきた95%にものぼる端材をデザイン性の高い装飾材として加工し、
国産の優れた建築仕上材として持続的な製品化に成功しました。
樹種を3種に絞り『在庫ロスゼロ』へ
広葉樹には、ケヤキ・ブナ・コナラ等の様々な樹種があり、特に飛騨の広葉樹は人の手によって規格化されていない天然林が多くを占めており、生産計画が立てにくい状況にありました。そこで、安定的に伐採される3種(クリ・ウダイカンバ・ホオ)に樹種を絞り、在庫ロスの軽減と安定供給を実現。
建築実用例
いままでチップになっていた広葉樹を
建築材料として
活用できる道が開かれました。
小径木の利用課題を克服。丸太一本一本の価値を最大化。
小径木:年間で約60棟(1棟約20㎡使用)施工面積にして1200㎡。 2.2m×20cmの丸太1200本の小径木を活用。
TO BE SUSTAINABLE.
JWPの未来
JAPAN WOOD PROJECT天竜(天竜ヒノキの大径木活用)、JAPAN WOOD PROJECT飛騨(飛騨広葉樹の小径木活用)の取り組みを使用した浜松市中央区坪井町モデルハウスで、ウッドデザイン賞2024を受賞。
2020年にJapanWoodProjectは、浜松天竜にて流通の難しい大径木檜材の活用でグッドデザイン賞を受賞、住宅用構造材だけでなく端材を家具、建物の仕上げ材、建具、階段材など価値の高い部材とし大径丸太1本を使い切ることで、主材の価格高騰を抑え、安定供給を実現してきました。
そして、今では住宅用以外にも遊具寄贈として地域派生や産学連携プロジェクトとして活躍のフィールドを広げてきました。本プロジェエクトは広葉樹の仕上げ材は、輸入材が当たり前となっている現状を、国産材に変える大きな一歩となりました。
これからも一層、日本の住まいを、山を、地域を持続可能に変えてまいります。